道しるべ

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現れたのは、最上さんと竹内さん、二人の男性社員だった。 口論をしていたのはこの二人のようだ。 竹内さんは同じ校閲係の所属で、私にとって先輩にあたる。 執筆係の最上さんとは同期らしい。 この二人が言い合いをしているところなんて初めて見たけれど。 さりげなく隣を見れば、中川さんも意外そうな表情で二人を見つめている。 が、件の二人はそんな視線にも気づくことなく言い争いを続けていた。 「──緊急事態だろ。どんなに遅くても明後日には出稿しないといけないんだ。お前、書けるだろ。頼むって」 そう言ったのは最上さんの方だ。 声に焦りと苛立ちがほんのりにじんでいる。 何があったんだろう。
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