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七色のビー玉。
カラフルなネオンがうるさいパーティー会場。
あの子は、どこにいるのだろうか。
突然、
「レディースアンドジェントルメン!みなさん、今宵のパーティーは楽しんでいただけていますか?」
スーツを着て蝶ネクタイをつけた、いかにもな司会者が言う。
「ここで皆さんお待ちかねの抽選会!」
盛り上がる会場。抽選会?こんなパーティーで、一体何が当たるというのだろう。
「皆様1人ずつに事前に選んで頂いたビー玉。それが抽選券となります!」
僕は周りを見渡す。ほとんどが透明なビー玉だが、赤や黄色、ピンク、水色のものもある。
「虹の七色のビー玉を持っている方が当たりです!」
皆がざわつく。僕は自分のものを見る。一瞬、ネオンで青く光っているように見えたが、よく見ると透明である。ハズレだ。
違う。こんなことをしている場合じゃない。早く、あの子を見つけないと。
「やったぁぁぁ!!!!」
血眼になって彼女を探す僕の近くで、歓声が上がった。どうやら、七色のビー玉のうち、黄色のそれを当てたらしい。
「おやおやこれは、おめでとうございます!黄色の玉と引き換えられるのは、【ありったけのお金】です。あなたにぴったりですね?」
「あぁ、やっと…。やっと、この借金地獄から抜け出せる!!嫁や子供たちにも伝えてやらなくちゃ…!」
そう言って、彼は帰っていった。
続いて藍色、オレンジ色と、次々に引き当てられていく。
賞品を手にした人達は、それまで失っていた
笑顔を取り戻し、帰っていく。
「おめでとうございます。赤い玉は【大切な人】です。よかったですね。」
司会者がそう言うと、30代くらいの女の人が、ふっとそこに現れた。
「お前、本当に…、本当にお前なのか!?」
「あなた…?ここは、どこなの…?早く帰りましょうよ。」
「うぅ…っ。また会えるなんて…。」
「何言ってるのよ。私はずーっと、あなたのそばにいるわ。」
泣きながら彼は、いや、彼らは帰っていった。
「紫色の玉は、【何でもできる能力】ですね。おや、いらっしゃいませんね。手に入れてすぐ帰ってしまわれたんでしょうか…。」
奇妙な男が笑みを浮かべ、帰っていった。
探しても探しても見つからない。
あの子は、あの子はどこにいったんだ。
きっとここに来ているはずなのに。
「おぉっと!!ここで1番の大当たり、緑の玉が出ましたね!」
空気が、変わった。
「いいなー!」
「あーあ。俺もあれが欲しかったのに。」
「あんな若い子が当てるなんて…。あたしに譲ってほしいわ。」
皆が羨望の眼差しを向ける。
その先にいたのは…。
「ッッ!」
思わず、声にならない声が出る。
あの子だ。間違いない。忘れるはずがない。
ずっとずっと会いたかったんだ。
やっと見つけた彼女の元へ、走る。
「いやぁ、皆さん羨ましがられてますね。どうです?今の気分は。」
「まさか本当に当てられるなんて、とても嬉しいです。ここに来た甲斐がありました。」
やわらかく微笑む、あの子の横顔が見える。
あと少し、あと少しで届く。
我慢できずに、叫ぶ。
「なぁっっ!君だろ…!僕のこと、覚えて」
「はーい!皆さんお分かりのとおり、緑の玉の賞品は…」
僕の声は、司会者に遮られた。
でもきっと、聞こえたのだろう。君がこっちに振り向いて
「【安らかな死】です。本当におめでとうございました♪」
笑って、消えた。
僕の足元に、青いビー玉が転がった。
今度はネオンのせいじゃない。本当に青色だ。
「最後のビー玉ですね。おめでとうございます。青色の玉は【美しい思い出】です。今消えた『誰か』のものかもしれませんね?」
それを拾うと、あの子の記憶が流れてきた。
そこには、君と幸せそうに笑う、僕がいた。
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