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真実の始まり
昔々あるところに、白面の者と言う名の九つの尾を持つ銀に輝く妖怪がいました。
その妖怪は恐ろしく、一夜にして国を滅ぼし、白面が通り過ぎた場所は他の妖怪の屍が山になりました。
白面の者はこの世の全てを憎み、喜んでいました。
しかし、ある時です。白面の者がいつものように国を滅ぼし、飛び去って行く中、何かが白面へと近づいて来ました。
それは、白面の者に家族を殺され。その悲しみと白面への恨み、そして妹を助けられなかった後悔からできた憎悪が生み出した妖魔の槍『獣の槍』だったのです。
白面は最初はいつもの人間の武器ようにたやすく破壊できるだろうと思い、攻撃します。しかし、その獣の槍は白面への憎悪でその攻撃をものともせず、お構いなしに迫って来ます。
白面は抵抗しますが、攻撃は効きませんでした。白面はその時、初めて『恐怖』と言う感情を味わいます。
白面の者に残されたのは二本の尾、そのうちの一本を鉛に変えようとした時、槍はかろうじて鉛の硬直で食い止められました。
白面の者はその尾を噛みちぎり、その場から逃げ去って行きました。
白面の者は怒りました。
「...我が恐怖した?そして逃げている?ありえぬ、決してありえぬ!!この最悪最恐の白面の者のこの我が...‼
.....許さぬぞ、許さぬぞ....!!」
白面がそう思っていると、視界の端に大きな町が見えました。
白面の者は腹いせに、この国の民になって内側から暴れてやろうと思い、人間の姿に変化しました。
そして森の中から町へ向かおうとしました。
その時です、人間の男が数人の男に追われているのを見ます。
白面はこう思いました。
「あの追われている人間を助け、信用された時にこの国を滅ぼしてやろう」と考えます。
白面の者はその男を助けました。お礼に男は。
「今日はもう遅いし、危ないから私の家に泊まって行きなよ、ここ最近は妖魔も出るらしいからね」と言い、白面の者を家に止めてもてなしました。男は自分の名前を教えました。統純(トウジュン)と言うらしいです。逆に白面の者に名前を教えるよう頼まれました。白面は少し困りました。うっかり人間の姿の名前をを考えるのを忘れてしまったのです。白面の者と正直に言ってしまえば計画が台無しになってしまいます。白面が考えているその時。統純が言いました
「ハハハ...ちょっとなれなれしくし過ぎちゃったかな?ごめんね?俺、昔からこうなんだ...周りに合わせられなくてさ。...さっきも剣士の人達に失礼なこと言っちゃって追っかけられてさ。ほんとに困っちゃうよね...。」と言いました。
白面の者はなんとかその場の危機から脱しました。
次の日、白面が町へと向かい、それを見送りに統純も町へと向かっていると、目の前に昨日の男達と統純が言っていた剣士が立ちはだかりました。待ち伏せされました。「貴様、昨日の農民だな?昨日はよくもあんなことを言ってくれたなぁ?俺が戦っているところを見たことがないだとぅ?なら貴様を人形に見せてくれるわぁ!!!!!」
と剣士が剣を抜きました。統純は震え上がりました。白面は思いました。
「やれやれ。せっかくこやつを騙し、この国を内側から滅ぼしてやろうと思っていたのに...。しょうがない、予定を変えよう。」そう思ったその時。
一人の男の首が飛びました。
剣士達が振り返ると。そこには大きな妖怪がいました。男達と剣士は悲鳴を上げ、逃げようとしましたが、逃げる間もなく喰われてしまいました。
「に、逃げよう!!!!」
と統純が言ったとき、妖怪がこちらを見ました。「....ほ〜?美味そうな人間の女がいるなぁ、こんなにご馳走が食べられるのは滅多に無い。よぉし、今日の飯はお前らで決まりだぁ。」と言って襲おうとしてきます。まず白面に襲いかかりました。その時、統純が飛びついて来ました。白面をかばったのです。
そのまま白面の手をひっぱり、統純と共にに逃げ出します。
しばらくして、森のどこかを走り続けていると、統純がいきなり倒れました。
白面が近寄りよく見てみると。なんと、統純の肩から大量の血を流しているではありませんか。
白面は手を被せ、止血しようとしました。
白面が妖気を使えばすぐ済む話ですが、白面は正体をバレたくない一心でした。
その時統純が倒れながら呟きました。
「ゴ....ゴメン。...ハハ、怪我しちゃった...。」
「もう良い、喋るな!!...何でこんなことを...!!」
と白面は言いました。
統純が答えます。
「だって.....俺の話を聞いてくれたから...。」
白面は少し驚きました。
「それは、どういう...」
「....俺さ....昨日も言ったとおり....周りに合わせられなくてさ....いつも正直に言っちゃうんだ....だから....なんでもかんでも....正直に喋るせいで.....他の人に迷惑かけたり.....怒らせたり....しちゃうんんだ....だから皆.....俺なんかには近付こうとも....しなかった.......でも....」
統純はそのまま続けた。
「でも....君は俺の話を聞いてくれた.....いつも.....周りに合わせられない俺の話を.....聞いてくれたんだ....だから....俺は....嬉しくて....嬉しくて......せめて君だけは.......。」
白面はその話を聞いていた。
自分の中で、何かが動いたのに気づく。
しかし、それが何なのかは、今の白面は分からなかった。
『憎悪』『恨み』『恐怖』とも違う、何かを。
その直後、さっきの妖怪がやってきた。
「ん〜?なんだぁ?、片方は死にかけかぁ。死人の肉なんぞ美味くもない...。少しドジッたなぁ...だが、一番美味そうな奴は傷一つなさそうだ....。お前を喰って今日はここまでにしとくかぁ。」
そう言ったその時。
妖怪は微かな妖気を感じた。
「なんだぁ?この妖気わぁ?他の奴でもよってきたかぁ?」
そう言った時。
「....お前の目の前にいるじゃないか....」
白面が立ち上がった。
妖怪が言った。
「...まさか、お前、妖怪だなぁ!?
....チッ‼騙されたって事か...美味そうなのがいると思ったのに...クソ!!このままじゃ気がすまねぇ!!!テメェを八つ裂きに引き裂いてやるぅ!!!!!!」
そう言った妖怪に白面が言った。
「...本当にいいのか?
....今、気が立ってるこの私に....。」
妖怪が近づいてくる。
「....に、逃げて....!!!」
統純が言った。
しかし、構わず喋り続けた。
「....貴様らが最悪最恐と言った....」
爪を剥き、襲いかかろうとしたその時
そいつは言った
「白面の者と言うこの我に....!!」
次の瞬間、白面の者は九つの尾を出し。妖怪を粉々にした。
妖怪は断末魔を叫び、破損した頭だけになった妖怪が言った。
「ギエェェェェェ....!!!は、白面だとぉぉ.....!!!?何故こんなところにぃぃぃ.....!!!!」
そう言った瞬間、妖怪の頭は潰れ、死滅した。
統純はもうろうとする意識の中、驚きの感情で、白面を見ていた。
白面は妖怪を殺すと、統純に近づいた。
そして、統純の肩に手をかざし。妖気を手から放った。そうすると、みるみる内に統純の肩の傷が治っていった。
統純は痛みが無くなり、起き上がった。
白面は思った
「我の正体が分かり、恐怖で逃げたところを
でコイツも殺すか...」
と思った直後、
突然、統純が抱きついてきた。
白面は驚いた。
統純が耳元で少し泣きながら耳元で言った。
「ありがとう....ありがとう....怖かったぁ.....本当にありがとう......」
白面は混乱した。
白面は一旦、統純から離れ、こう言った。
「お、お前....!!我を恐怖しないのかぁ!!!!?」
統純は不思議そうに、「なんで?」と言った。
「な、なんでって...我は白面の者だぞ!!?普通それを聞いたら怖がるだろう!!!!?お前も我の噂ぐらい聞いたことあるだろう!!!!!?」
統純はそれを聞いて、当たり前そうに
「知ってるよ?どんな妖怪かも知ってる」
と言った。
「ならなぜ恐怖しない!!!!?」
白面は困惑しながらこう言った。
それに統純は答えた。
「だって、また助けてくれたから....。」
白面は驚愕して
「はぁ!!!?」と言った。
「だって、助けて貰ったら、お礼を言うのは当たり前じゃない?助けてくれた人を怖がるのは失礼だよ。」
統純は言った。
それにさらに白面は聞いた。
「だ、だがこれから我はお前を殺そうとも思っているのだぞ!!?それでも怖くないか!!?」
白面のその言葉に少し統純は考え込んだ。
しかし、統純の答えは意外なものだった。
「....君に殺されるんだったら良いかな?」
白面は驚愕した。
「な.....なんで.....。死が怖くないのか?」
白面は驚きのあまり言葉を失った。
統純はそれについて答えた
「そりゃあ怖いよ?でも....。」
統純が続けて言った。
「俺は...身よりもないし....村からも孤立している。その時に君に出会った。そして、俺を危機から二度も救ってくれた。君が、俺の死の血で喜んでくれるなら、俺はそれでも構わないかな.....。」
白面は困惑した、
他人が喜ぶために命を差し出すのか?それで良いのか?なぜそれで良いのだ?
白面が意味もわからず九つの尾を上げ、統純を刺し殺そうとした。
その直前、統純は言った
「これが、俺のできる精一杯の事なんだ。」
その言葉に、白面の動きは静止した。
白面は考えた。
ーそうか、コイツは力なき弱き者。
ーだからコイツはその弱さを強みに役に立たそうとしている。
ーなら....。
白面は上げた尾をしまいこんだ。
統純は不思議そうに白面を見ました。
「.....ならば、殺さぬ。今はな?だが....。」
白面は続けて言った。
「統純、お前が我を恐怖したその瞬間がお前の最後だ。」
統純は聞いた。
「な、なんで?」
さらに白面は続けた。
「我は人間や妖怪の恐怖や憎しみを喰らう。統純。お前は今、我が与える死を恐れない。ならば、お前が役にたとうとしても、ただの無駄骨だ。」
白面は最後に
「ならば...」と言い、こう言った。
「お前が役にたつときは、お前がが我を恐怖したときだ....!!」
そう言うと、白面は統純を立たせるのを手伝った。
統純はその瞬間、
「やったーーー!!!!」と叫んだ。
「は?」と白面は言った。
「いや、確かに死ぬつもりだったけど。もうちょっと『白命』と話たいな〜ってね?」
白面は呆れ返って
「...あっそうか....」と言った。
しかし、白面は少しして気づいた。
「.....ん?『白命』?」
白面が聞くと、統純が答えた。
「そう、君の名前だよ。」
白面は言った。
「何を....我は白面の者と言う呼び名が....」
しかし、統純はそれについて言った。
「でも、その名前だと自分の正体をバラしてるようなもんだよ?なら仮名が必要じゃないかな?」
「ッ.....!!!」
白面は言葉を詰まらせた。
統純はそれに続けて言った。
「なら、僕を二度も助けてくれた優しい白い命で『白命』っでどうかな〜と....」
白面は少し顔を曇らせた。統純は心配そうに。
「あ、アレ?気に入らなかったかな?」
そう言った。
しかし、それについて白面はこう言った。
「......フン‼好きに呼べ.....。」
白面の者.....
いやこれからは『白命』と呼ぼう。
白命は自分をその名で呼ぶのを許した。
統純は喜び、さらにこう言った。
「良いの!?ヤッターーー‼
....あ、あと自分の事を『我』じゃなくって、さっきまでの『私』にしたら?」
「はぁ!?
....統純、お前少し調子に乗り過ぎじゃないか?」
「だだって....」
しかしこれも白命はしぶしぶ
「....あ〜もう‼分かったわかった!!!!
人間の姿の時だけだぞ⁉」
「ヤッターーーー!!!!」
その後。そのまま町じゃなく、家に帰りながら喋り続けていた。
これはその、最悪最恐と呼ばれた大妖怪の少しの安息の日々と。その大妖怪の覚悟と悲しみの物語。
そして、現在の中国の一部の地域が、その妖怪を『白命の御方様』と崇め。後に中国の最重要武装組織『白片(ハッペン)』となる物語である。
だがそれは、まだまだ先の、お話。
ー続くー
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