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「そもそも何でケーキ屋なのよ! ごつい体しておかしいでしょ!!
ユイちゃんもそう思うよね」
「えっ、お、俺? 俺が知るかよ!
ってかケーキ屋と太郎の見た目とは関係な……誰がちゃんだ!!」
「アンタの店なんて潰れてしまえばいいのよ! なんなのよ、あのショートケーキ!!
ふんわりと柔らかい生地とふわっふわなクリーム。
口に入れた瞬間広がる濃厚なクリームと苺の香り。
甘過ぎずけれどしっかりと主張してくる気品のある上品な甘さ……」
「アンタの店に二週間通い続けたせいで三キロも太ったんだからね!」
「まいどあり」
男子は兎も角、女子達の怒りは収集がつかず、最早何に対する怒りかさえ結衣にはわからない。
結衣はただただ太郎の両親の作るケーキの味を思い出しながら、ショートケーキも良いがチーズケーキも捨て難いと自分の世界に逃げる。
しかし学園内にいる限り、今日もというべきか……。
どうも結衣は休まる時間という物に無縁なようで――
「ヤメたまえ君達!!」
ガラっと教室の扉が開かれコツコツと足音を響かせながら、無駄に姿勢の良い男子生徒が入ってくる。
金髪の巻髪にフリルの付いたシャツと如何にもキザそうな生徒、この学園の理事長の息子、花園輝瑠(はなぞの ひかる)だ。
輝瑠は無駄に姿勢の良いその足で、ユイのもとへと足を運ぶ。
「ヒカル、もうホームルーム終わってんぞ」
「なーに、ボクくらいになると今が登校時間になるのさ」
クラスメートの声に、ファサッと髪をかき分け答える輝瑠。
クラス中そんな輝瑠を残念な子を見るような眼差しを向けるが、輝瑠は気づかない。
「そんなことよりも……」
胸ポケットから一輪の青いバラを取り出し、輝瑠はある一点へと視線を向ける。
「ひゃっ――」
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