安城結衣は男である。

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安城結衣は男である。

 私立花園学園高等部。  花園学園は、中等部から大学まであり、その校舎は各々別に存在している。  だがどの校舎においても花に囲まれた学園であり、桜並木を抜けた先に門を構えている。  入学の季節ともなれば、新たな年を迎えた生徒たちを満開の桜が向かい入れるのだ。  とは言え、ひと月立つ頃には満開だった桜も気が付けば葉桜と変わり、何処か寂しさを感じさせる。  登校中の学生の何人が緑に変わりゆく桜に目をとめたであろう。  もしかすると目をとめるものなどいないかもしれない。  そう……。 「待ちなさ~~~い!!」 「――や、いやだよ!!」 「この私から逃げきろうなんていい度胸しているわね、ユイのくせに」 「くせってなんだくせってー!!」  一人の少女から逃れるように桜並木を走り抜け、校門へと足を踏み入れる。  一見女の子と見違えるような小柄な少年、私立花園学園高等部の制服を身に包んだ一年生、安城 結衣もまたその一人だ。     結衣にとって……。いやっ―― 「待ちなさいって――」  2人にとって風景は壁紙みたいなものでしかない。  ただただ日常が流れていく。 「言っているでしょうが!!」  シュッと少女の手から音を立て鋭い風がぬけると、カバンから取り出されたタブレットが異様な風を纏い放たれる。    そしてー― 「はニャッ!?」  タブレットはただ真っ直に結衣の頭に命中。  その勢いのまま、結衣は見事なヘットスライディングをその場で決めた。 「うぐぅっ、いっ、痛いだろうがアスカ!! それに今入学前に忍び込んで手に入れた『アレ』使ったろ」 「だから何?  ユイが止まらないのが悪いんじゃない」  疾風の如く走る結衣に追いつくことが出来ないことを明日香は知っている。   馴れた手つきで入学前の学校に忍び込んだ際に手に入れた『アレ』の力を使い、鞄から取り出したタブレットをオーバースローで結衣目がけて投げつけたのだ。  勿論手に入れたといっても、学校の物を勝手に盗んだというわけではない。  ダメ。犯罪。というものだ。  因みに夜の学校に忍び込むのは少年少女のロマンである。※関係各所の許可を得て忍び込んでおります。よいこの皆様は勝手に忍び込むのは止めましょう。
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