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1年A組
花園学園。
桜並木のトンネルを抜け学園の門を一歩くぐれば、そこには花々の楽園が広がる。
中でも中央広場に咲き誇るローズガーデンは、学園のシンボル『ブルーローズ』に最も近い一種とされている薔薇『ひより』が力強くも美しく咲いていた。
しかし朝のホームルームを終え、1年A組の教室で1次元目までの時間を持て余す安城結衣にとってそんな奇跡よりも重要なことがあった。
「でもユイちゃっ、安城さんってお肌モチスベで羨ましよね~」
「髪なんかもサラサラ~~、どこのシャンプー使ってるの?」
「べ、別にフツーの……だよ」
「ホントこんなにカワ……素敵なのに、太郎!
アンタいったいどういうつもりよ」
ホームルームを終えると同時、校門での騒動を聞きつけた女子達が結衣と太郎の周りに集まってきていた。
クラスの女子達も1ヶ月経てば結衣の禁句を自ずと理解し、禁句に触れないように言葉を選ぶ。
そこにクラスの男子も加わり……。
「そうだぞ太郎!
ユイちゃっ……安城を独り占めするなんて羨ましすぎるぞこのやろう」
「…………」
クラスメート達は、騒動の発端であろう太郎を睨みつけるが、表情ひとつ変えずに太郎は結衣の隣の席に着いている。
「俺なんかまだ安城に触れることさえできてないのに」
「俺なんて話しもまだ……」
「…………」
「なんとか言いなさいよこの巨神兵」
「……なんとか」
「も~~~アンタはそういう事じゃ、あぁ~もっ、兎に角、こんなカワ……。
あ、アンタが悪い!! ユイちゃんは皆のものよ」
何故だろう、味方してくれているのに嬉しくない…。
と、結衣は、一方的に責められる親友を惨めに思いながらも苦笑を浮かべ、その成り行きを見届けることしか出来ない。
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