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炭鉱労中央執行委員が、
「炭鉱労としては、現存炭鉱の現状維持を基本方針に、閉山時の退職金の完全支払いのための閉山交付金等の支援を確約することを要求する」
と、炭鉱労中央執行部としての基本方針を説明した。
「炭鉱労は、引っ繰り返せなかったら、条件闘争に移行するだけなのか?政策終了後も操業を続けるヤマが出てこない前提で動くつもりなのか?」
と、執行委員の一人が真意を問う。
「政策終了後も操業を続けるヤマがあるのは想定しているが、政策終了後に閉山した場合は、閉山交付金制度はないから、退職金の支払いは不可能だろう。操業を続けた場合、閉山時の退職金の支払い以前に、給与を払えるのかという問題もある。政策終了後は、産業界の取引協力は得られないだろうし、価格引き下げ圧力を掛けられるのが想定されるが、海外炭並みの価格での取引を要求されたら、運転資金がすぐに枯渇して操業を続けることも、閉山費用も捻出できずに閉山も出来ない泥沼に陥る可能性がある」
と、下手に操業を続ければ、最悪の結果を招くと説明する。長期存続は不可能だが、あの方式をとるかどうか、腹案を説明するか……
九州に本拠地を構えていた炭鉱会社に父親が勤めていた執行委員が、その会社が企業ぐるみ閉山した時の事を思い出した。
「政策終了直前に坑口は塞がないで閉山して、退職金を払えばいい。親父が勤めていた炭鉱会社は、企業ぐるみ閉山した後に、坑口をそのまま使って、新会社で時限的にだが操業を続けたところがある。その方式を使えば……」
それを聞いた別の執行委員が、
「そんな方法がるのか!」
と、期待と驚きを露わにする。中央執行員が、
「あるにはある。だが、新会社に、長期操業を続けるための設備投資が出来るか?今まで通りの給与通りになる訳でもないぞ」
と、その方式で存続しても、長く続けられるかは未知数だし、雇用条件は下がらないわけがないぞと言う。
「それでも、ヤマが残せるのなら……」
と、藁にも縋る思いで、企業ぐるみ閉山後に新会社で操業を続ける方式を知って、期待した執行委員が言う。それに対して、
「新会社が、組合員を雇う保証はない。採炭と人車、計画、ガス巡回関係以外は、下請けから採用するかもしれないぞ」
と、ヤマは残せても、組合員が残れる保証はないと言う。
執行委員長が、
「会社に政策終了後の操業を続ける意思が有るか無いかわからないのに、捕らぬ狸の皮算用をして、一喜一憂するな。足並みが揃わなければ、勝てるものも勝てない。足元を見られたら、負けるぞ」
と、戒める。
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