石炭政策(ヤマ元執行部)

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 勝ち目があるかと言われたら絶望的だ。闘う意思を捨てたら、そこで勝負が決まる。牙が折れても、爪はまだ残っているぞと、燃料資源庁の官僚に思い知らさなければ、条件闘争も負けるのが目に見えている。 「組合員には、ポスト八次の内容は厳しい、炭鉱労としては現状維持を要求し、それが容れられないなら条件闘争に移行すると、基本方針を説明する。現状維持を求める闘いは、今まで以上に厳しく困難かもしれない。炭鉱労の意地を見せなければ、長期存続に必要な最低条件を引き出すことは難しい。軽挙妄動は厳に戒め、炭鉱労中央執行部の指揮のもと一致団結し、政策転換闘争に挑むことを望んで止まない」 「執行委員長、それでいこう。本当は、俺が言うべきことなのに……」 と、中央執行委員が言う。 「俺が、お前の留守をしっかり守れてないからだ。全員大会は、執行部は針の筵に座る覚悟がいるな。全員大会の開催日を決めて告知するぞ」 と、執行委員長が言うと、執行部は操業日カレンダーを確かめる。来週の日曜日、三番方には申し訳ないが、朝の十時から全員大会を開くしかないだろう。執行部が知っていることを、いつまでも組合員に知らせない訳にはいかない。 「来週の日曜日、朝十時から全員大会を開く。都合がつかずに参加できないものは、白紙委任状を執行部に提出するようにと、告知すること」 と、指示する。  全員大会は、荒れるのが予想される。内容が内容なのもあるが、叩き台とは言えこんな内容が出てくるまで何を遊んでいたんだとか、こんなひどい内容はないとか、舐めているとか、怒りに満ちた発言が飛び交うだろう。  組合員に叩かれるのは覚悟。如何にして、組合員の怒りの矛先を燃料資源庁に向けさせるか、向けさせた怒りをどう使って闘うか、考えなければならない山のようにある。  会社と秘密裏に交渉の席を持って、会社に長期存続の意思があるのか、あるのなら大規模な合理化を実施する気でいるのか、政策終了後も操業を続けるつもりで居るのなら、閉山前に新会社を立ち上げて、その新会社に事業を引き継がせる形で操業を続けるのか、ハッキリさせなければならない。  英雄も勝者も居ない闘いになりそうだ……
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