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第1話 運転するならしっかり寝て
以前、私はある会社で営業職をしていた。
どうしても自動車の運転がしたくなったのだ。周囲の反対を押し切り、持ち込みトラックの運転手をしている。
日課は単純、日が昇る前、明け方3時少し前に起きる。運転は3時から開始だ。
月に半分は、一日の睡眠時間を3時間にしている。二十一時間近く、トラックを運転している。
残りの日は、オンラインゲームで遊ぶ日々を送っている。
給料は前職より下がったが、充実した毎日だ。ただ、人に直接会う機会は、少なくなってしまった。
やや名残り惜しいが、心にゆとりのある生活は楽しい。
そんなある日、自宅に突然、警察官がやって来た。
一日に八時間以上の運転は、現在は軽微な法律違反である。
「運転手さん、一日に二十時間を越す運転は、ちょっと大目に見れませんよ」
私より若い警察官は、柔らかな雰囲気を崩さない。
私の立場も、理解してくれているのだろう。すぐに帰ってくれた。
しかし、同業者団体からは、三十日間の営業停止処分を受けてしまった。
契約先の運送会社は、全く気がつかなかったと言い張ったそうだ。私は運送会社の契約を解除された。運送会社から慰労金という名目で包んでもらえた。
口止め料かもしれないが、ありがたくもらっておいた。
営業停止処分期間は、自分のアパートにこもる。
オンラインのレースゲームをして退屈をしのぐ。チームプレイでミスッたら、ゲームチャットで、「ねえ小学生なの?」と絡まれた。
年齢まで明かす必要はない。運転免許を持っている、と伝えたら、今度は年寄り扱いだ。
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