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次から次へと空から水滴が落ちてくる。
いつになったら止むんだろう──そんな事を考えていた。
と、須藤さんは僕を見た。
「先生はこれからレポートの採点をするのですか?」
そういった。
「うん、明日までに全部やれって教授に言われたから、教授の命令は絶対だからね、ははは、でも今日はありがとう、色々手伝ってくれたお陰で早い時間に学校から出られたものね」
今は午後三時を少し回ったところだ、大学からの帰り道ににわか雨が襲ってきた。
「今日は午後の授業なかったし、お手伝いできて嬉しいです」
「ありがとう、自宅でゆっくり仕事ができるよ」
僕は学生たちの書いたレポートがぎっしり詰まったリュックを背負っている。
「私でよければいつでも言って下さい、お手伝いいたします」
「頼りにしてます」
「はい、でも先生早く帰らないといけませんね、レポートの採点で徹夜になったら大変です」
「ははは、慣れてるよ」
「駄目です、お体にさわります! 」
僕は須藤さんの力強い口ぶりに少し慌てた。
「へ………うん」
「じゃあ行きますよ」
「行くってどこに」
「先生のアパート近いでしょ、さあ、走りますよ」
須藤さんはそういうと僕の腕を、しなやかに伸びた白い指で握りしめた。
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