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「とにかく、今日は昨日と同じことが起こりますから、自由に過ごしてください。私はまだやることがあります、午前3時ごろに来ますので」
そう言い残して蛍さんは袴を風になびかせながら去っていってしまった。昨日と同じことが起こる――つまり、僕は彼女にプロポーズをして、受け入れてもらえる――そんな幸せな体験がもう一度できるのだ、ラッキーではないか。
夕方、彼女に会うまで、確かに僕は昨日体験したのと同じ体験をした。ふらりと立ち寄った喫茶店で高校の友人と再会し、コンビニのくじ引きでスポーツドリンクを引き当てた。
そして今、仕事を終えた彼女と一緒に夕食をとり、一年中綺麗にライトアップされている街路樹の道を歩いているところである。
この先にある噴水の前で、僕は彼女にプロポーズをする。
「なぁ――」
僕は彼女を呼び止めた。ポケットの中に入っている小さな箱を取り出す。
「僕と、結婚してくれないか?」
「え――?」
驚いたような彼女の表情。昨日見た表情と同じだ。そして、みるみるうちに涙がキラリと大きな瞳に浮かび上がる。
「嬉しい――ありがとう」
彼女は嬉しそうに笑いながら一筋の涙を流した。僕はその涙を指ですくい取りながら彼女に口づけをおとす。
柔らかい感触が、触れたところからじんわりと伝わってきて、僕の心を温めた。
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