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その夜は一緒にいたかった。このまま彼女を抱いて朝を迎えることができたらどんなに幸せだろうと思いつつも、彼女は翌朝も仕事がある。
「また明日ね――」
名残惜しい気持ちを押し殺しながら、僕は彼女を見送った。家まで送ろうと申し出たのに、離れがたくなるからと言って彼女は笑顔で手を振って帰っていく。
同じだ、昨日と同じ幸せな一日……どうして僕は、この日をなかったことにしたのだろう。
いや、この幸せな一日をもう一度体感したいと思ったのだろうか? そのために、僕は得体の知れない丑寅という妖などと契約というのを結んだのだろうか?
やはり、俄かには、信じられない。どう考えても人違いだ。蛍さんはまだ調査を行っているのだろう。きっと人違いだったのだ、自分がそんな不用意な人間ではないことは、自分が一番よくわかっている。
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