そして同じ朝が始まる

13/18
前へ
/18ページ
次へ
 その場で僕が見たものは、血まみれで細い道路に横たわる彼女の姿だった。彼女が持っていたバッグの中身が散乱していた。  何度も彼女の名前を呼ぶが、答えはない。  救急車を――! やっと頭が動き出して、震える手でスマホを扱おうとするが、うまく電話がかけられない。いたずらに時間だけが過ぎていく――  そんな時だ、かちっと秒針が動くような音がした、時刻はちょうど午前3時―― 「黒川さん、時間をもらいに来ましたよ」  顔を上げると、にっこりと人のよさそうな顔をした若い男が立っている。ぱりっとしたスーツがこの場にはあまりにも似つかわしくなかった。 「救急車を! 警察を呼んでくれ!」  叫んだ僕に、男はにこりと微笑む。 「大丈夫、なかったことにしてあげます。私と契約してくださったでしょう? あなたの寿命の分、時間をくださるって。そうすれば、彼女が生きていた幸せな時間を何度だって繰り返せると――」  あなたが、生きている限り――そう、男は垂れ下がった大きな目をにぃっと細めた。  そうか――思い出した。昨夜も、同じことが起こった(・・・・・・・・・)
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加