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「うわっ!」
思わず声を上げると、小さな影は「驚かせてすみません」と凛とした声で謝ってきた。
見ると、小学生くらいだろうか? 袴のような着物を着た女の子が子供には似つかわしくない表情をして僕の顔をじっと見つめて――いや、睨んできている。
「黒川司さんですね」
女の子は子供らしくない口調で僕の名前を呼んだものだから、驚いた。僕はこの子と面識があっただろうか――などと思い出してみるが、親戚や近所に住んでいる子は思いつかない。年齢的に考えて、友人にもこんなに大きな子供はいないと思う。
「君は?」
「申し遅れました、私は黄泉比良坂西都青龍東京区検非違使捜査壱課の蛍と申します」
は? 今、なんて言った? 子供の間で流行っている早口言葉の類だろうか……?
僕は袴の女の子が何を言っているのかさっぱり聞き取ることが出来なくてぽかんとしていた。辛うじて聞き取ることが出来たのは、この子の名前が蛍さんであることくらい。
「えぇっと、蛍さん?」
「はい、黄泉比良坂西都青龍東京区捜査壱課の蛍と申します」
蛍さんは同じ早口言葉をもう一度口にしたけれど、やはり聞き取ることができない。ただ、彼女が次に口にした言葉に、僕は耳を疑うほかなかった。
「黒川司さん、あなたを時間強盗幇助の疑いで逮捕いたします。私と一緒に来てください」
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