毎日15分間、君とあの場所で

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…………………………………………… 午後15時。 今日のあたしは、いつもの駄菓子屋の裏ではなく、写真展が行われているギャラリーの前にいた。 ──graph そう書かれた写真展。 カメラマンの名前も書かれていないし、杏ちゃんのお兄ちゃんということしかわからない。 全然違う人かもしれないけど、どうしてもこの時間に来たかった。 「いらっしゃいませー」 扉を開けると受付の女の人が迎えてくれる。 どうやら、カメラマンが迎えてくれるわけではないらしい。 「どうぞ、ご覧になってください」 あたしからチケットを受け取ると、順路の最初を指してくれる。 「はい.......」 キョロキョロ辺りを見渡すけど、リュウくんもルルも見当たらない。 せっかく15時に来たのに、見当違いだったようだ。 「ひゃー、ソラちょっとタオル。雨降ってきてびしょびしょ」 「わー、ルルも濡れちゃってるじゃん」 扉をのあいた音とともにきこえてきた声にバッと振り向くとたしかに知った顔があった。 会えた、と思った。 でも、あたしは声をかけることなんかできなくて、その場から走りだしていた。
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