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旅
狼を中心に、一か所に集められた死体を満足げに見つめる隻眼の熊。
俺は怒りが身体を支配していくのを感じた。 そして、何かが弾けとんだ。
「お…。 うぉぉおぉぉお!」
森から抜け出すと、敵は一斉にこちらを振り返る。
風上に立っていなかったので、存在はわからなかったのか、それとも、この大量の血の香りが俺の存在を消してくれていたのか、定かでない。
「グオオオオオッ!」
隻眼の熊が吠える、同時に猪や狼たちが反転し、襲い掛かってくる。
ドクン…。 ドクン…。 まただ、でも、今度は俺から願う! 力を貸して欲しいと。
背中に突き抜けた水の存在は素早く形を整え、両腕から水の刃をくりだす。
一体、二体…。 次々に刻まれる獣たち、俺は敵が一瞬怯んだのを確認し、正面に向かって突撃する。
正面の敵は俺が金色の斧で斬る。 左右の敵は水の刃に成す術もなく倒れていく。
俺たちの勢いは止まらず、そのまま隻眼の熊の至近距離まで近づいた。
「グゥアアア!」
右手を振り上げ、一気に振り下ろされた一撃はとてつもなく重く、斧で受け止めたが、なんとか耐えられた。
その瞬間に、背後で動く気配がした。 しかし、俺はそれを止めさせる。
「こいつは! 俺の獲物だぁ!」
振り下ろされた腕を払いのると、下側から上に向かって斧を振るう。
払われた腕は、なんの感触もなく斬りとられ、遅れて大量の血飛沫が辺りを染め上げた。
「オオオオッ!」
後ろに一歩下がった敵。
「痛いか? 怖いか? 初めて感じる感覚だろう…。」
「俺の仲間たちは必死に生きようとした…。 だから、お前も必死に生きようとしてみろ…。」
熊は残った左腕でこちらを掴もうとしたが、俺はその手を蹴り上げ、左下から右上に向かって斧を振るう。
音もなく落ちる左手。 敵は恐怖に慄き、必死に逃れようと俺に背を向ける。
「逃がすかよ…。」
そう言い放つと、後ろにいた存在から無数の触手のようなモノが伸び、逃げようとする敵を捕らえる。
俺は敵に近づきながらつぶやく。
「ごめんよ…。 みんな。」
「フゴッ、フゴッ。」
見苦しくもがく敵に、俺は頭蓋骨から背骨にかけて斧を走らせた。
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