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翌日、私は少しだけ朝早く学校に行って、23のクラスを覗いてみた。
学校についている生徒はまだ、数えるほどしかいない。私は何となく階段の近くに佇んだままそあら先輩がいつ来るのか、姿がみられるのかを待っていた。
結局その日、彼女は姿を見せなかった。
胸の中に、ほんの小さな穴が開いて、そこをひゅう、と冷たい風が抜けたようなわびしさに、気づかないうちに私は唇を噛んでいた。
私は毎朝、そあら先輩が来ているか確認するようになっていた。
彼女はずっと休んでいるようだった。
勇気を出して、塚田先生にも聞いてみた、でも
「体調を崩して休みます、とおうちから電話で連絡が来たきりよ」
そんな簡単な返事しかもらえなかった。
「喘息だと、入院する人もいるんだよね」
ルネは他人事とは言え、かなり心配そうに眉を寄せている。
「でもさ、その先輩も何だっけ、なに会員?」
ミホが屈託のない口調で続けた。ルネもすぐ思い出して
「セル会員、だよね。その会員だったの?」
と聞く。未歩は腕組みしたまま、うんうんとうなずいてみせる。
「かなりのセレブなんだよ、その人。きっと個人病院の個室で悠々自適ライフよ」
「……そうかなあ」
そあら先輩が言ったことが気になっていた。
「登録はカンタンだよ」と。
簡単というのは、きっとPCとかスマホで、ピピッと操作するだけでできる、という意味だったのだろう。お金もかかるとはあまり思えなかった。
急に、セルのことが気になり出した。
家に帰ったら、早速調べてみよう。
『セル』そして……彼女のことばを思い出す。
「イヤーエイク」
そうだ、ピアスのことをそう呼んでいたんだった。
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