17人が本棚に入れています
本棚に追加
パソコンからの仮登録をした翌々日。
届いた包みは小さな段ボール箱だった。
大きさはA4の封筒程度で、厚さは3センチくらい。可愛いピンクの送付書がついている。
すぐにご開封、内容をご確認下さい、とあったので私はママにみつからないよう急いで部屋に持ち込み、逸る気持ちをおさえながら封を開けた。
中身は、白い発砲スチロールの側面が見えるボール紙の箱、折り畳まれた説明書、白い真新しい、厚手の封筒が一枚、それだけだった。
ボール紙の筒になったケース外側から中を引き出すと、薄い発泡スチロールの型で包まれたものがひとつ。
「ホチキス……?」
一見、大きさも形も、スリムな文房具のような器具がきっちりと収まっていた。
全体は白い樹脂製で、ホチキスというより少し幅の広いピンセットのようにも見える。
ふたつの先端は直径1センチかそこらの平らな円盤状になっていて、内側は何となく光っている。光に透かしてみると、何だか複雑な回路のような模様が見えた。
先端から元に伸びて折り返しているあたりは手に収まる程度のグリップになっていて、赤いシールが張ってあった。見ると
『注意! 使用するまで先端を合わせない、ボタンを押さないでください』
と書いてある。
よく見たらグリップには小さな赤いスイッチのような押しボタンがひとつ、ついていた。
まず説明書をよく読もう、と添付の紙を拡げてみる。
『イヤーエイクの装着方法』と書かれた、図解入りの説明があった。
装着は簡単ワンタッチ、痛みも圧迫感もありません、と可愛いイラストと共に爽やかに述べられている。
「なになに?」続きを読む。
『丸い円盤状の先端を少し広げるようにして、どちらかの耳たぶを挟みこみます、赤い文字で『表』と書いてある方を前面(耳の表側)にしてください。
耳の厚みは特に問いませんが、厚過ぎて挟めない場合には、耳の上側か、鼻腔など、ふつうにピアスが可能な場所を選んでください。どこにも挟めない場合には使用を中止して、コールセンターにご連絡ください』。
どうも表裏とあったのは、裏側にやや痕が残るせいらしい。
そこで初めて、そあら先輩の耳たぶを思い出した。
そうだ、確かぽつりとけし粒くらいの痕があった。
本当に、痛くないのだろうか?
そう思った時には器具で耳たぶを挟んでいた。
ええと、それから、と片手で耳たぶを器具に挟んだまま左手で説明書をたどる。
『位置が固定されたら、器具を動かさないように赤いスイッチを押して2秒待ちます。』
ここにも
『痛みは全くありません、まれに感受性の鋭い方にぴりぴりと刺激を感じる場合がありますが、人体には全く影響がありませんのでご安心ください』
とあった。
目をつぶり、ごくりとつばを飲んでからスイッチを押した。
最初のコメントを投稿しよう!