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映画は最高だった。
映画館の外に出てみると、次の回を待つ列がすでに雨の中連なっているのがみえた。
その時唐突に、目の前の道路、少し先の交差点に救急車の姿をみた。
風向きのせいかサイレンも急に聞こえ出し、本当にふいに目の前に現れた感じだった。
館内から数人が飛び出してくる。一人が叫んだ。
「すみません、わき道に救急車入ります、列、そこ空けて下さい、早く!」
遅れて映画館から出てきた30代くらいの女性三人連れが、ふり向きながらひそひそ話しているのが耳に入った。
「怖かったわ、何あの倒れ方」「吐いただけじゃないの?」「血よ、あれ、血。すごかったわぁ、胃からよ、きっと」「まだ若そうな女の人だったよね、」「金髪だからってオバンかもよ」
あはは、と高い笑いが上がった。けど、すぐに周りの騒ぎに遠慮したように口をつぐんで、彼女たちはそそくさとどこかに去って行った。
金髪? すぐに映画館に割り込んできた女を思い出した、館内では彼女を見かけなかったが、まさかあの人が?
ちらっとそう思ったけど、大通りに出た時にはもうすっかりその出来事は頭から抜け落ちていた。
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