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3.10月18日 相野たける|僕は誰?
そういえばと気付いたことがあった。
彼女は昔──といっても、僕が子供の頃に記憶している母と雰囲気が似ていたのだ。
父に従順で、感情をあまり表出さない人だった。家事も、父や息子である僕のために手を抜くことはなかった。
そんな母が一度だけ父に泣かされているところを目撃したことがあった。
すごい衝撃だったのを覚えている。
なぜ父がそんなことをしているのかもわからない子供だった僕だが、今ならわかる。そう、今なら。
この日は、早めの帰宅をした。母のことを思い出したからだろう。彼女とも会わず、珍しく夕食時だ。
それがいけなかった。
玄関の扉を開けると、ものすごい形相を浮かべた妻が紙のようなものを片手に詰め寄ってきた。
「あなた、何してるのよ! よりにもよって、自分の生徒に手を出すなんて!」
その紙のようなものには、愛を育み終えた僕と彼女が楽しそうに笑っている姿が写っていた。
END
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