揺らぐ気持ち

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揺らぐ気持ち

試合が始まった。 本当ならアキラと深司を応援しないと駄目なのに・・・ 私の口は「向日先輩!!頑張ってください!!」と叫んでいた。 橘さんはすごく驚いていた・・・けれど何も言ってこなかった。 試合は3-6で氷帝が勝った。 向日先輩は私のところまで走ってきた。 先輩にタオルを渡す。 「マジで応援してくれてたよな!!」と笑顔で言ってきた。 「お疲れ様です」 「お前のおかげで勝てた。」とすごく嬉しそうに笑う先輩。 「あの・・・」 「ん?」 「さっきの・・・」 「安心しな。ぜってー言わねーから」 「・・・」 「もうさ。アイツじゃなくて。俺にしたら?」 「!?」 俺って??え?これって告白??? 今日出会ったばかりなのに・・・ 「なんてな。冗談だよ」と頭をぽんと軽く叩かれた。 あれ・・・ なんで私ドキドキしてるの? 「じゃあまたな」と先輩はタオルを渡して帰っていった。 手元にある先輩が使ったタオルを握りしめた。 優しいくせに意地悪で笑顔が素敵な人・・・ 笑顔から真剣な顔のギャップがすごくかっこよかったな・・・ 「・・・い。・・・い!」 「咲良!!」 と深司とアキラに名前を呼ばれた。 「何?」 「何?じゃねえーよ!お前・・・氷帝応援してただろ」 「え・・・!?」 「なんで俺たちを応援してくんないんだよ・・・そりゃ練習試合だったけどさ・・・相手チーム応援されちゃリズム上がんねーよ」 アキラはそういうとベンチに座って落ち込んでいた。 深司はいつもと変わらず冷静なまま。 「ごめん・・・」 「・・・おもったんだけどよ」 「なに?」 「向日さんと知り合いなんだな」 「・・・」 アキラになんて言えばいいんだろ。 だって岳人さんには 1・アキラの件で泣いていたのを見られた。 2・泣き止むまで傍にいてくれた。 3・アキラへの気持ちを知られた。 と言いたくないことでいっぱいだし・・・ 「まあね」と作り笑いをした。 「しかし、負けたの辛いな・・・」 練習試合が終わって片づけをしているときアキラがまだ悔しそうに言う。 「咲良がな・・・こっち応援してくれてたら勝ててたかもな」 「わかんないよ」 「そうか?」 突然深司が「咲良。ちょっと来て」と腕を引っ張ってきた。 「どうしたの?」 「ここじゃ言えない」 そういうと、人気のない自販機の前に連れてこられた。 深司は財布を取り出して、「なんか飲む?」と言った。 「え?」 「早くして。」 「じゃあ紅茶・・・」 「はい」と渡されベンチに腰掛ける。 深司は水を買って私の隣に座った。 「アンタさ。神尾のことどう思ってんの?」 「・・・」 「聞いてるんだけど」 「どうって・・・深司には関係ないじゃん」 「は?」 「アキラも深司もただの幼馴染みだよ・・・」 と言って俯く私を見て多分気づいた深司は「あっそ」とその場から去った。 一人残された私はアキラのところに戻らず帰ることにした。 全部全部ぐちゃぐちゃになっちゃった・・・ 何してんだろ・・・ アキラも深司も大好きなのに・・・ なんで・・・ 一人で帰るなんていつぶりなんだろ・・・ ずっとアキラと深司と帰ってた道。 アキラのバカな話を深司の冷静なぼやきで笑ってたな~ もう戻れないのかな こんな気持ち気づいてなかったら・・・ 今もアキラと深司の隣で笑ってた自分がいたのかな・・・ なんで・・・なんで・・・ 部活やめようかな・・・ 「あ。咲良~!」と元気いっぱいの声が後ろから聞こえた。 「あ・・・アキラ」 「なんで先帰るんだよ~。深司に何か言われたのか?」 「そ・・そんなことないよ」 「嘘だな」 「なんでよ」 「つらそうな顔してる」と顔を覗き込んでくる。 「幼馴染みなんだしなんでもいえって」 ずるい・・・ずるい・・・ アキラのこの優しいところを好きになったのかな・・・ そんな優しくしないで・・・ 幼馴染みに戻れないじゃん・・・ アキラに優しくされるたび・・・ アキラと一緒にいるたび・・・ このまま時が止まればいいのに・・・ やっぱり好きだよ・・・ 私のこと好きになってよ・・・ なんで杏ちゃんなの・・・? 私じゃダメなの・・・? 「私じゃ・・・」 「ん?」 「ううん・・・なんでもない」 「なんだよそれ~」 「早く帰ろ!おなかすいた!」 (私じゃダメなの?)って言おうとした。 だけど言えなかった。 向日先輩が・・・。 向日先輩がこっちを見ていたから・・・
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