遅かった気持ち

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遅かった気持ち

私は不動峰中に通う二年生。 今日も朝から、幼馴染みの神尾アキラ君と伊武深司君と待ち合わせの公園にいた。 集合時間は6:40分。 朝の練習のためいつもこの時間。 時間ちょうどに伊武君。深司が来た。 「深司。おはよ。」 「ああ。」 肩までかかっているストレートな髪。 目はきりっとしていて、物静か・・・なんだけど。 「なんだ。また神尾の奴遅刻かよ。いつもいつも遅刻してきてさ。まってるこっちの気持ちわかってないよな」 と、深司はぼやく癖がある。 幼稚園の頃から深司と一緒にいるから、私やアキラはもう慣れっこだけど、中学入学したときは、みんなからの視線が怖かった。 でもみんなもう徐々に慣れてきているのかもしれない。 だって深司のファンクラブがあることをアキラから最近聞いたことがある。 まあ・・・顔イケメンだし優しいしテニスできるし・・・そりゃモテるよね。 「神尾から連絡来てないの?」 「うん。まだきてないよ」 と深司がため息をつく。 「アイツほんとになにしてんだか」 「まあまあ。後10分待ってみようよ。」 「咲良~!!深司~!!」と後ろから聞こえた。 振り返ると、猛ダッシュでこっちに向かってくるアキラの姿。 深司はため息をつく。 「わりぃ!遅れた!」 「毎回毎回、遅刻してきてさ。待ってるこっちの気持ちかん・・・」 「悪かったって!じゃあ行こうぜ!」 「ったく・・・やになっちゃうよな・・・」 「まあ。アキラらしいよね」 「え?何が?」 「こっちの話!ほら急ぐよ!レギュラーのお二人さん!」 私は二人の背中を押した。その時の私は、ずっとこの三人でいられるって思いこんでいたんだと思う。 アキラと教室に向かう。 深司は隣の二組。始業式の時すごくぼやいていたのを覚えてる。 「あ。咲良。今日から1週間杏ちゃんがマネの手伝いしに来てくれるらしい」 「杏ちゃんが?」 「咲良一人じゃ大変だろ?」 「まあ・・・」 「じゃあまた昼休みな!」とアキラは自分の席に向かった。 私も席について、メニュー表を開いた。 マネになってテニスの勉強を始めてから、橘さんからトレーニング表の作成などをまとめる仕事を与えられた。 私にとってはすごく嬉しくて、毎日違うトレーニング表を見るだけで幸せだった。 橘さんは一人ずつのトレーニングの変えていて、すごく頼れる大好きな先輩。だから妹の杏ちゃんともうまくやれるよってその時は思ってた。 昼休み。深司、アキラと屋上でご飯を食べていた。 「あ。深司。今日漬物もって来たよ。」 小さい保冷材でに包まれたタッパーを渡した。 「母さんが深司にって。浅漬け作ったらしくて」 「ああ。ありがとう。」 「また漬けたら味見してって言ってたよ」 「俺なんかでいいなら・・・」と渡した漬物を食べ始めた。 「まあ。咲良の母さん料理うまいからな!」とアキラが言った。 「母さん喜ぶよ~伝えとくね!」 「おう!」 三人で笑う時間が好き。 三人で話す時間が好き。 三人で居る時が大好き。 いつもと変わらない毎日。 アキラと深司と三人で。一緒に登校して。一緒に部活に行って。 ご飯食べて。放課後寄り道して。 ずっとずっと三人は一緒だった。 これからも三人一緒って思ってた。 だって深司もアキラも大好きな幼馴染みだもん。 離れることはないって思ってたんだ。 放課後。深司が教室に迎えに来た。 「咲良。部活行こうよ。」 「うん。あれアキラは?」 教室を見渡してもアキラの姿はなかった。 「先に行ったんじゃない?」 テニス大好きなアキラだし・・・深司の言う通り先に行ったのかな。 いつも一緒に行くのに。ほんとテニスバカ。 くすっと小さく笑って、教室を出た。 「今日はここまで!みんなお疲れ」 「ありがとうございました!!!!」 練習が終わり、みんなとボールの片づけを始めた。 深司が「今日三人で飯行こうよ」と誘ってきた。 「いいね!どこ行く?」 「神尾も入れて決めよ」 「じゃあ早く終わらせなきゃね!」 ボールがいっぱい入った籠をもって体育準備室に向かった。 薄暗い空に赤い夕陽が広がっている。 早く戻って、アキラにご飯誘わなきゃ。 ボールの籠を片付けて帰ろうとしたときだった。 「俺。杏ちゃんが好きです!付き合ってください!」 と聞き覚えのある声が聞こえた。 部員が杏ちゃんに告白したのかな~。 「えっと・・・」 戸惑っている杏ちゃん。 誰に告白されたんだろ。。。と恐る恐る準備室から顔を出すと杏ちゃんとアキラがいた。 赤面しているアキラ。あんな顔見たことない・・・。 その時、急に胸が苦しくなった。 アキラが杏ちゃんを・・・。
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