父子の七月七日

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また七月六日の夜。智は今年は一人で星を見に行く。 隣には優里も大知もいない。 それでも愛車を走らせる。優里も大知もいないのに、車で煙草を吸うこともない。 もう癖になっている。優里と大知と一緒に過ごした名残は山ほどある。 それを捨てることなどできない。 時折、コンビニに寄り煙草休憩を挟んで、今年も同じ場所に辿り着く。 時刻は三時。優里と大知がいた時はなるべく煙草を吸わないようにしていたから、早く着いた。 今年は違う。 智は車から降りて、胸ポケットの煙草をまさぐる。 「もうお父さん遅いよ」 後ろから懐かしい声がして、智はつい振り返る。 「大知……、明日学校あるんじゃないのか?」 「勉強より大切なことがあるでしょ。俺にとっちゃ大切なことで大事な場所なんだよ」 「一人で来たのか?」 「まさか。お母さんが車で。俺、小学生だよ」 「大知!」 智が抱き締めた大知は去年より幾分背が伸びていた。 「お父さん、約束して。七夕の夜は俺とここで会うこと。待ち合わせの時間は三時。必ず来るから」 「ああ。約束だ。必ず来るから。さぁ星を見よう」 並んで星を眺める父子。二人は今年もどちらが流れ星を多く見つけるか競争を始める。 一年に一度の父子の時間として。 了
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