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一
高校の文化祭は大学には劣るけど、出し物が意外と凝ってたりよそからの客も多くてだいぶうわついている。
知らない制服を着たチャラそうな茶髪が前方に立ちはだかるというこの状況、予想外だったけど、あり得ないことでもないんだろう。
「あの! すっごくかわいいですね!」
物怖じする様子がない。
手慣れてるんだろうか、度胸あるなと変に感心する。
そいつはチャラいままで言った。
「俺の彼女になってくれませんか?」
「あぁ?」
俺はドスの効いた不機嫌極まりない声で聞き返した。
確かに俺、今日すっごくかわいいよ。
今から文化祭のメインイベント、女装男装コンテストに参加する。
ネットゲーム『ブロッククラウン』のノンプレーヤーキャラクター・朱鷺葉のコスプレ、気合い入れてやったからね。
淡いグリーンのツインテールに、白とグリーンのヒラヒラフリフリリボン付きのかわいい服。
最初は罰ゲームだと思ってたけど、なんか似合っちゃったから超ノリノリだし。
でもさ。
かわいいけど女装だから。
彼女とかなれないから。
「俺の好みは、俺みたいな女の子だ」
小さくてフリフリの似合う、ちょっと気弱な女の子。
演出しきれてないけどさ。
断ったのにそいつは、
「俺もです。気が合いますね!」
とか言って、嬉しそうに俺の手を握ってきた。
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