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二
文化祭の振替休日が明けた火曜の放課後。
宮町はためらいなく三年の教室に入ってきて、帰ろうとする俺の席まで迷わずやってきた。
茶髪はヅラだったのか今は黒髪だが、ショートカットでチャラい印象は変わらない。
変わったのは女子のブレザーを着てるトコ。
スタイルがいいから見た目のレベルが高い、気がする。
ちょっとだけドキッとしたじゃねーか。
「藤松先輩、デートしましょうよ」
コンテストの時に俺の名前がアナウンスされたのを聞いたんだろう、名指しでナンパしてきた。
「コスプレしてないのによく俺だってわかったな」
あの日の俺は、俺じゃなかった。
詐欺レベルのメイクしてて超可愛かった。
もちろんコンテストはうちのクラスが優勝だった。
だが今の俺はどこにでもいそうな背の低めなライトオタク、同一人物には見えないはずなのに。
「サイズ感でわかりましたね」
宮町は失礼なことを言ってきた。
が、悪意がないようなのでスルーする。
「俺、おまえの彼氏になるって言ってねーだろ」
「じゃあ彼女になって下さい」
「なんねーよ!」
もめてると外野から『彼女なの?』とか『一年生?』とか冷やされ、今まで女の影がまったくなかった俺は、いたたまれなくなって教室から逃げ出した。
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