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 コスプレエリアで写真を撮ったり撮られたりした後に即売会のほうを見て回った。  宮町はもう一周しようと言ってきたが、初心者にこの人混みはかなり酷。  一人で行って来いと手を振って、俺はコスプレエリアのすみでペットボトル片手にコスプレを眺める。  そこで、知ってるヤツに遭遇した。 「藤松くん……、コスプレハマっちゃったの?」  うちのクラスの学級委員の森下くんだ。  森下くんは近ごろ異世界転生モノをたしなむパッと見リア充のガチオタクだ、こんなところで会ってもおかしくはない。 「ハマってねーよ、まだ二回目だよ」  俺は森下くんに文化祭でナンパしてきた宮町に誘われて初めてここに来て、ハマってはいないがノリノリでコスプレをしていることを説明する。 「えー、この状態から彼女できちゃうんだ」  森下くんは俺の全身を眺めて感心する。 「彼女じゃないし」 「ちょっと聞いて。俺も今日、彼女とここ来たんだけどさ」 「俺は彼女と来てないから」  て言うか森下くん彼女いるのかよ。  森下くんは周囲に人がいないのを確認してから続ける。 「女子って難しくない? 俺すごい大変なんだけど」 「なにが大変なんだよ」  ここに一緒に来れちゃうような彼女とか、うらやましいんだけど?  森下くんは困った顔して言う。 「リアルに恋愛シミュレーションゲームなんだよ、選択肢一個間違うとフラグ折れちゃうんだよ」 「よくわかんねーよ」  ゲームに例えるなよな、俺恋愛シミュレーションやんねーから。 「いくら深読みしても地雷にぶち当たるしさ、だからといって単純に考えても察しろよって言われるしさ。藤松くんはそういうことない?」  これはもしや、恋愛相談?  俺そんなの回答できないけど?  それでも森下くんが真剣に聞いてくるから、ほんの少しだが宮町とつるんだ経験から森下くんの恋愛について考えてみた。 「俺はそんなことないな。森下くん、それ別れたほうがいいんじゃないの?」  超めんどくさいだろ、察しろとか。  言いたいことあんなら言えよってなるよ俺は。 「いやっ、でも彼女、いつも俺のこと好きだって言ってくれるんだよ。趣味も合うし」  森下くんは彼女はいい子なのだと力説してくる。  別れる気ないなら我慢して付き合っとけばいいんじゃないの? 「女子が難しいってのはなんとなくわかるけど、宮町は女子っぽい難しさないからな。俺恋愛経験ないし、なにも解決策浮かばねーよ」  尻に敷かれて疲弊しているであろう森下くんを助けてあげられないのは残念だけど、ホント俺にはどうにもできない。  森下くんはスネた顔をする。 「藤松くんうらやましいな、付き合いやすい彼女で」 「いやだから、彼女じゃないから」  でも、うらやましいんだ?  彼女じゃないけど、確かに付き合いやすい。  森下くんから見たら、俺って恵まれてる?
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