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いや違うな、こいつ自身まったく女子っぽくしていないんだ、彼女とか女がどうこう言うほうが違和感あるし、失礼、なのかも。
それでもこいつは俺に初恋してて、俺と付き合いたくて付きまとってる。
「わかった。彼女じゃなくて、恋人になりたいって話だな」
宮町は男っぽいけど男友達って感じでもなくて、だからと言って女友達でもなくて、フツーの男女みたいに型にハマったもんじゃなくもっと単純なものを求めてんのかな。
宮町はまたポテトを食う手を止めて力説してきた。
「そうなんです! 私、自分のこと『私』って言うのヤなくらい女の子っぽくするの抵抗あるんですけどね、先輩のこと全然男の人として見てないんですけどね、それでも恋人になりたいんですよ! おかしいですかね⁈」
宮町が女じゃないだけじゃなくて、俺が男でもないのかよ。
俺が女装して余裕かましてたから、宮町が密かに気にする男女の垣根的なものを越えたのかな?
異性だと意識せずに趣味もノリも合わせられる。
それで友だちでは足りないほどの好意を持たれた、ってことだろうか。
さっきも思ったけど、光栄だよ。
単純に、好かれてるのは嬉しい。
「おかしくねーよ。おまえのこと女の子あつかいできる気がしないし、俺のこと男として惚れろよとか全然思わないし。好きにしていーよ」
なんかね、好きにさせてやりたいって気になった。
無邪気な願いをかなえてやりたいって言うか。
「藤松先輩、恋人になってくれるんですか?」
宮町はそれはもう嬉しそうに、キラキラした表情で聞いてきた。
単純で正直なヤツだな。
「んー、まあ。けど彼氏にはなんねーよ。友達の話聞いてたら超めんどくさそーだったから」
森下くんみたいに大変な思いをする予感はまったくないんだけど、宮町が彼女になれないことを気にしてるような気がしたから、俺も彼氏になれないと言っておいた。
なんか平等でいいんじゃねーかな。
「あはは! 恋人なのに彼氏じゃないとか、よくわかんないですね」
「おまえが最初にわけわかんねーこと言ったんだけどね? けど、わけわかんなくても楽しけりゃいいだろ」
どうでもいいことにこだわるより、単に同じこと楽しめればいい。
あとから『やっぱ彼女になって』とか、たぶんなんねーだろ。
女の子とイチャイチャしたい気がしない、宮町が喜んでいればそれで俺も十分嬉しい。
宮町は目を細めて、急に落ち着いた顔と声になる。
「やっぱり藤松先輩、好きだなぁ。楽しければいいですよね、同感です」
好きとか言われたら、さすがに甘酸っぱい気分になった。
素直にそんなこと言われたら、フツーにときめくじゃないか。
宮町のこと俺も、嫌いじゃねーな。
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