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「柊先輩、だっけ。事故に遭ったの」  香帆がその名前を出すと、ぴくり、と聖の眉が動いた。 「柊空史(ひいらぎそらふみ)先輩。三年生の。……交通事故に遭って今でも入院してるって話だけどさ。うちの先輩が、なんか変だなーってことで調べたらしいんだよね。事故に遭った状況が妙だったし、何で今でも入院したまんまなのかわかんないって。大怪我だっていう情報しか伝わってこない。両親さえ状況がよく分かってない。しかも……その先輩とやらが入院している病院に、あんたらオカルト研究会のメンバーは随分頻繁に出入りしてる。でもって、それ以外の人はほぼほぼ面会謝絶と来たもんだ。……しまいには、学校側から調査そのものをやめるように指示が来たんだって。これどういうことよ?あんたが妙に部活に熱心になったのも、つながってたりするわけ?」 「…………」  まくし立てると、聖は少しばかり沈黙して――やがて深く、息を吐いた。 「間違ってはいない。実際、先輩のことがなかったら、オカルト研究会の活動、ここまで頑張ろうと思うこともなかったかもな。……でもそれだけじゃない。究極的には俺のためだ。おかしいか、俺がそういうものに興味を持ったら」 「おかしいから言ってる。あんたはそういうタイプじゃない」 「趣味が変わることだってある。人間ってのはそういうもんだ」 「否定はしないけどね。……一つ言っておくことがあるとすれば、自分の方の情報は一切明かさないくせに、人の情報だけ欲しがるようなヤツを誰が信用すんのかってことよ。……悪いけど、私から話すようなことはなーんもないんで。ほれ、とっととお帰り」  しっし、と手を振ってやれば。それも道理と思ったのか、はたまた香帆を説得するのが面倒になったのか、そうか、とだけ言って聖はそのまま戻っていった。  本当に、何がしたいのだ、あいつは。呆れて香帆が周囲を見れば――香帆と仲の良い友人達は、どこかぽーっとした眼で聖が出て行ったドアの方を見つめているではないか。 ――おいおい、マジかよ。 「夏美も苺も、まさかああいうのがタイプだっての?」 「タイプっていうか、いや普通にイケメンだと思わんの香帆ちゃーん」 「だよねーかっこいいよねー」 「えええ……」
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