四百年ほど昔(1)

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 その日から三日間が経った今日。島民の殆どが家財道具をまとめて、島から逃げ出してしまっている。  実の所、凪が恵比寿様の像に悪戯をしたのが猿彦だという事実を知ったのは、今日の昼間のことだった。  猿彦が遊び仲間に囲まれて吹聴しているのを、たまたま耳にしたのだ。 「見たか! 皆の慌てふためいた姿を! 腹を抱えて笑ったぞ。あの像の顔を赤く塗ったのは、このわしじゃ」  続けてこう言った。 「あんな迷信、嘘に決まっておる。見たことか! 島には何も起こらんじゃないか。どんな神罰が起こるのか見たかったもんじゃのお」  そして、あの像の顔に何を塗ったのか、と仲間から訊かれた猿彦がこう答えたのだった。
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