四百年ほど昔(1)

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「……わしも良く知らんのじゃ。から渡された物を使っただけじゃからな。紅殻でも溶かした、ただの水じゃろう」  続けてこう言った。 「実は今夜あたり、もう一つ仕掛けてみようと思っておる。今度はあの像が涙を流すんじゃ。きっと、 面白かろうなあ。じじい、ばばあは心臓が止まるんじゃなかろうかのお」  それを聞いた凪は、猿彦を殴りつけてやろうと拳を握ったものの踏みとどまった。  ……多勢に無勢だ。  仮に猿彦を殴れたとしても、その仲間に押さえ込まれるに違いない。凪は落ち着きを取り戻そうと、深く息を吸い込んでその場を去ったのだった。  そんな歯痒い気持ちを思い出してしまい、凪は小舟を漕ぐ腕に思わず力を入れてしまう。
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