119人が本棚に入れています
本棚に追加
「……わしも良く知らんのじゃ。あるお方から渡された物を使っただけじゃからな。紅殻でも溶かした、ただの水じゃろう」
続けてこう言った。
「実は今夜あたり、もう一つ仕掛けてみようと思っておる。今度はあの像が涙を流すんじゃ。きっと、
面白かろうなあ。じじい、ばばあは心臓が止まるんじゃなかろうかのお」
それを聞いた凪は、猿彦を殴りつけてやろうと拳を握ったものの踏みとどまった。
……多勢に無勢だ。
仮に猿彦を殴れたとしても、その仲間に押さえ込まれるに違いない。凪は落ち着きを取り戻そうと、深く息を吸い込んでその場を去ったのだった。
そんな歯痒い気持ちを思い出してしまい、凪は小舟を漕ぐ腕に思わず力を入れてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!