四百年ほど昔(1)

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 乱れた呼吸のまま言葉を切らしながら、猿彦が応える。 「神社には行った! 恵比寿の顔に悪戯もした! そうしたら、……!」 「何をふざけて……」  凪は続きを言おうとして、持っていた竹籠を落としてしまった。横になった竹籠から獲ったばかりの魚が投げ出され、地面に落ちる。 「なんだ、あれは?」  猿彦の背後。橋の手前あたりに、あまりにもが立っていた。  それが生き物だという事に気がつくまで時間が掛かってしまうほど、異様な形をしている。  凪は恵比寿神社にある古い地獄絵図のことを思い出してしまった。 「……餓鬼だ」
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