四百年ほど昔(1)

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「あの化け物が人を丸飲みにしたんじゃ!」  その白い何かの大きく膨らんだ腹部を改めて観察する。 「……あの腹の中に人が?」  ようやく両足で地面を捉えた猿彦が地面に手をつきながら立ち上がり、逃げ出そうとする。勢い良く蹴った地面の小石が幾つも跳ね上がった。  飛び出した猿彦がひきつけでも起こしたように、息を吸い込む。凪もこの場を離れようと、振り返り駆け出そうとした。  ところが一歩踏み出そうとした所で、動けない。風を切るような空気の流れを感じる。  。  ゆっくりと視線だけを隣に向けた凪は、呼吸することさえ忘れてしまう。指の一本でさえ動かす事が憚られた。  その大きさに慄いてしまう。凪の身の丈の二倍、いや三倍はあるだろう。
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