四百年ほど昔(1)

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四百年ほど昔(1)

 満月から降り注ぐ光の粒子を、緩やかに揺れる海面がその包容力で受け止めようとしていた。  けれども、その一部が反抗期の子供のように抗って、海上をふわりふわりと浮遊する。  そうやって居場所を求めた光の一部が、海に小舟を浮かべて一人で漁をしている(なぎ)の網膜に辿り着いた。  目を凝らして見つめていた海面から、視線を上げる。  うーん、と背伸びをした。 「しかし、肩が凝る」  独り言を漏らし、固くなってきた双肩を解そうとして、肩甲骨を大きく回すように動かす。  視線の先では、生まれ故郷である雨竜島(うりゅうじま)の姿が満月に照らされて、しっかりとした輪郭で見えていた。
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