四百年ほど昔(1)

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 人の大きさの分だけ白い何かの喉にあたる部分が大きく膨らみ、その大きさが徐々に下に向かっていく。  やがて猿彦の両足も見えなくなり、白い何かの腹部が一段と大きく膨れた。  その様子を見つめる。凪にはそれしか出来なかった。  浮世離れした光景に、これは夢か狐に化かせれているのではないか、と考えてしまう。  猿彦を飲み込み終わった白い何かが微動だにしない。食後の満足感に浸っているのか、それとも大きく膨らんだ腹部が邪魔で動けないのか……。  今なら逃げることができるのではないか、と片脚を後ろに引いた。  草履の裏が地面の砂利と擦り合い、が生まれる。  その瞬間だった。
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