四百年ほど昔(1)

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 白い何かの上体がのっそりと凪の方に向いた。八本の細く白い脚を気味悪く動かす。凪が踏み出す前に目の前まで近づいてきた。  思わず呼吸を止めていた。  白い何かが頭のような部分を周囲を探るようにして、左右に動かす。  ……凪が目の前に居るにも関わらず。  その部位が凪の目の前を通り過ぎそうになる。  ……もしかしたら、見えていないのではないのか?  両手で拳を作り強く握りこんだ。呼吸を止めたまま、白い何かの動きに合わせて視線を動かす。  こめかみを冷たい汗が伝った。それを拭う事さえ出来ない。  暫く我慢していると、白い何かが諦めたように脚を動かし始め、通り過ぎて行こうとする。
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