四百年ほど昔(1)

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 やり過ごせるのか……?  凪が胸を撫で下ろそうとした時だった。遠くからお囃子が聴こえる。  その音に反応したのは凪だけではない。白い何かも上体を音がした方向に向けている。そして、細い八本の脚が一斉に動き始めた。  あっという間に凪との距離が生まれ、その白い背中が小さくなる。 「待てっ!」  凪は大声を上げていた。  白い何かが立ち止まることはない。凪の視界には、もう白い何かは居なかった。  その背中を追うように凪は走り始めた。白い何かが目指しているのは恵比寿神社だろう。残った町人で御神楽の練習をするのだ、と歌夜が言っていたことを思い出す。 「行くなっ!」  凪は走りながら大声をあげていた。
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