四百年ほど昔(1)

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 次の瞬間、凪の躰が宙に浮いていた。  白い何かがその上体を大きく動かし、大槌で凪の胸部を打ちつけるように振り払ったのだ。  勢いよく神社の玉砂利の上を滑りながら進み、土を抉るようにして漸く動きを止めた。  凪はすぐに上体を起こそうとした。胸に受けた衝撃の所為かうまく呼吸する事が出来ない。口の中で血の味がする。  両手を地面につけて何とか立ちあがろうとする。膝に力が入らず、片膝を勢いよく玉砂利についてしまった。  玉砂利がその重みで弾け飛んで音を立てる。  その瞬間だ。  その音に反応したのか、白い何かが凪のいる場所にゆっくりと上体を向けた。動き出すが大きく膨れ上がった腹部の所為か、先ほどまでの俊敏さを失っている。
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