アラクネ・シックス・スパイダーズ

四百年ほど昔（１）

　凪は膝に力を入れて立ち上がった。再び両手で宝刀を構える。

　探るように白い何かが凪の方に近づいてくる。八本の脚が巨大な昆虫のそれのようで、気味が悪い。

　その姿を観察し、凪は気が付いた。先ほど斬りつけたはずの傷が塞がっている。

　ならば今度は、と凪はその距離が十分に縮まるのをじっと我慢した。呼吸も止めて物音ひとつ立てず。

　やはり目が見えないのか……。

　その距離が五歩分ほどになった所で凪は勢い良く踏み出した。

　倒れているかがり火の台を踏み台にして高く飛び上がる。振り上げた宝刀を白い何かの側頭部のような箇所に勢いよく薙いだ。

　刃が当たる寸前だ。白い何かが上体をぐにゃりと曲げて避ける。宝刀を振った勢いで凪は宙で体勢を崩してしまった。