四百年ほど昔(1)

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 地面に落下するよりも早く、凪の躰に再び大槌で打ち付けられたような衝撃が生まれる。  躰が飛んでいた。  そう感じた次の瞬間、恵比寿神社の拝殿まで凪は吹き飛ばされ、拝殿の障子の組子をへし折りながら突き破る。  拝殿の床に破片が飛び散った。凪は床に投げ出されていた。  躰を襲う猛烈な痛みに呻き声が漏れる。  双眸を見開く。白い何かが拝殿の浜床まで来ていた。様子を伺っているのか、じわりじわりと扉の方に動いてくる。  木片が散らばる床に掌をつけ、凪は宝刀を床に突き立てた。体重を預けて立ち上がる。  その僅かな物音に反応したのか、白い何かが八本の脚を器用に使って床を進もうとした時だ。  その動きが屏風絵のように固まる。
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