四百年ほど昔(1)

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 暫くそうしていたかと思うと、上体を左右に大きく揺らし始めた。白い躰を壁に打ちつけ閉じたままだった口を醜く、大きく開く。唾液のような液体を垂らした。  どうしたんだ……?  苦しんでいるのか?  白い何かの上体が徐々に大きく膨らみ、それが喉元と思われる場所まで達する。更に大きく口を開いた。  上体を床の方に曲げて何かを吐き出す。その大きな塊が拝殿の床に投げ出された。  その物体に思わず声をあげてしまう。 「歌夜!」  藤色の小袖を羽織ったままの歌夜が床に横たわっていた。  歌夜を吐き出した事で白い何かも元の状態を取り戻したのか、動き出そうとしている。
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