四百年ほど昔(1)

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 切りつけた数本の脚から黒い何かが滴り床に飛び散る。その勢いのまま白い何かが体勢を崩し、本殿への扉を派手に突き破った。  凪は振り返ってその様子を確認する。  本殿の中に白い何かが居た。微塵になった襖が辺りに散らばっている。 「そこは神様がいるべき場所だ!」  と、凪はその姿を睨みつけた。  そこで気がつく。その様子がこれまでとは違っていた。白い何かが立っていた。 「躰が傾いている?」  本殿の床の中央には石棺が置かれている。天井にはその蓋が縄で吊し上げられていた。それは恵比寿像がこの神社に運び込まれた時に使われた物だと、凪は聞いたことがある。  白い何かが上体を垂直に保てず徐々に傾いていく。よく観察するとその脚の片側、四本の脚が石棺の中に入っていた。
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