四百年ほど昔(1)

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 宝刀を白い何かの下腹部に深く突き刺す。そのまま体重をのせて床を蹴り上げた。  白い何かの巨体が傾く。萎んだ四本の脚では加重に耐えられなかったのだろう。  倒れ込むようにして石棺の中に白い何かの上体が押し込まれた。その白い躰が石棺に触れた瞬間、苦しそうに口を広げる。  気味の悪い甲高い声をあげた。  白い何かが石棺から逃げ出そうとする所を、凪は下腹部に刺さったままの宝刀を押し込むようにして更に上から抑え込む。  徐々にその白い躰が萎んでいき、干からびるように皺が増えた。  このままいけば歌夜と逃げられる……。  そう考えながら双腕に力を込め直した時だ。  凪の見えている景色が、ぐらりと揺れ始めた。  こんな時に眩暈か……、と凪は双眸を瞑り、頭を左右に振る。直ぐに双眸を開いてみた。
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