四百年ほど昔(1)

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 ……天井に吊るしてあった石棺の蓋が落下してきたのだと、理解することができた。一筋の光も漏れてこない石棺の中に、白い何かと一緒に閉じ込められたのだ。  外では揺れが続いているようだった。  取り残す形になってしまった歌夜の無事が気になる。凪は両腕を突っ張ると、背中を押し付けるようにして石棺の蓋を持ち上げようとした。  けれど、その重量から蓋が僅かでも動く様子はない。凪の下に居る白い何かは更に萎んだようだった。その為、次第に躰を動かす空間が生まれる。凪の頭の中は歌夜の事で一杯になった。 「歌夜、歌夜、歌夜っ!」  その頃……。  雨竜島に残されていた島民たちは我先に逃げ出そうとして、右往左往していた。 「恵比寿様がお怒りじゃ。島が沈むぞ! 早く島から出るんじゃ!」
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