四百年ほど昔(1)

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 動けない老人たちを背負い、島の高台へと向かう者も居る。 「早よう高いところへ登れ! 津波がくるぞ!」  すると誰かが本土の方を見つめて、静かに呟いた。 「山が火を噴いておる……」  海の向こうに見える山々が噴火し、真っ赤に燃えた大岩が次々に空高く舞い上がっていた。  揺れは一段と激しくなり、雨竜島の海岸が崩れる。砕け、あっという間に海に飲まれていった。  町の家屋は潰れ、材木に戻る。道との境界も曖昧になり、割れた瓦の破片があちこちに飛び散った。  雨竜島のあちこちにあった石垣も崩れてしまって、大小の無骨な岩が転がっていた。  恵比寿神社の鳥居も倒れ、拝殿も崩れる。人が拝むことはもう出来ない。
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