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足元が芝生ということに、椎名はほくそ笑んでしまう。
せめて砂利を敷き詰めていれば侵入を検知しやすいだろうに……。
セキュリティに対する意識の低い家はこういった部分で判断しやすい。
両膝を曲げると扉の鍵の位置まで姿勢を低くして、ピッキング用のツールを取り出した。
傷をつけないように、と意識しながら椎名は鍵穴にツールを差し込む。細心の注意を払い作業を進めた。
目的の物以外に手を出したり傷をつけたりする泥棒は三流だ……。
椎名はそれを自分の流儀だと考えていた。そのまま暫く鍵穴と格闘する。
「ヒラケゴマ」
と、唱えたように鍵穴が音を立てた。
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