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 生まれつきの器用さもあってか、ピッキングを習得するのに時間を必要とはしなかった。  失礼します、と心の中で呟きながら丁寧に扉を開く。そこは台所に通じていた。勿論、室内は暗い。  この屋敷に住人が不在だということは下調べして分かっている。それでも足音を立てないように、廊下まで進んだ。  椎名は夜目が効く方だ。ペンライトは持参しているが、今夜の月の光量であれば不要だと、判断する。  探したのは二階に続く階段だ。その先に書斎があることを椎名は知っていた。  廊下を進んだ先にあった幅の広い階段を使い、二階に進んだ椎名はそのまま書斎に向かう。事前に手に入れたこの屋敷の平面図から部屋の配置は記憶していた。  木製の装飾を施された豪華な扉に近づくと、黒い手袋をした手でドアノブを握る。
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