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「不届き者!」
その声の主の外見が更に椎名を困惑させた。
時の狭間に迷い込んでしまったのではないか?
一瞬、そう考えてしまう。
扉のそばに立っているのは若い女性だ。椎名を困惑させたのはその服装だった。白い稽古着に紺色の馬乗袴。そして、薙刀を構えている。
椎名と同年代ぐらいだろうか? 少なくとも十代の後半という所だろう。小柄で華奢だ。
肩の辺りまでありそうなふわっとした茶色い髪を頭の後ろでラフなお団子にまとめている。
その崩し具合が絶妙に洒落て見えるのはセンスの良さなのだろう。
椎名は降参するように両手を挙げた。抵抗しないという意思表示のつもりだ。
すると女性が命令するような口調で言う。
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