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「持っている物を机の上に置いてください。素直に従うなら警察に通報しないと約束しましょう」  掲げた手に持っていた豊府聞書の原本を机の天板に置こうとした所で、椎名は動きを止めた。 「君は海外の人?」  椎名は女性の方を向いて口角を上げる。  そう言われた女性が薙刀を構え直し、眉間に皺を寄せた。 「生粋の日本人です」 「そう」  椎名は短く応えてから言葉を続ける。 「警察に通報して困るのは僕だけではないよね?」 「何が言いたいのです?」  女性が薙刀を更に高く構えた。 「僕は楽観的な性格だとよく言われるんだ。けれど、座右の銘は『石橋を叩いて渡る』なんだよ」
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