四百年ほど昔(1)

4/38
117人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
「妙な夜だな。この天候ならもっと獲れても良いはずだけれど……」  何かの前触れではないだろうか? とつい勘繰ってしまう。 「人も居ないのだから、多く獲れた所で仕方がないか」  そう考えながら、凪は持ってきた竹籠に網の中の魚を入れていった。  魚の姿が見えなくなったところで、竹籠の中を覗き込む。  これぐらいあれば、家族の分と近所に配れるぐらいはあるだろう。  そう考えた凪の脳裏に真っ先に浮かんだのは、隣家に住んでいる幼馴染の歌夜(かや)の姿だ。  凪の記憶の始まりには歌夜が居た。お互いの家を行き来し、一緒に森や渓流、海辺で遊んだ仲だ。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!