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 椎名は持っていた豊府聞書を開いた状態で女性に見せた。 「……白紙だった」 「どういうこと?」  そう女性が言った瞬間だ。  部屋の照明が消える。再び部屋は月の白さで満たされた。その白さの中を静かに侵入して来たのは小柄な人影だ。 「後ろ!」  と、椎名が声を出した瞬間には遅かった。  現れた人影が手刀で目の前に居た女性の首筋を素早く打ちつけていた。同時に女性が床に倒れ込む。  椎名は身構えたが人影が近づく方が早かった。  人影が椎名の目の前まで来たかと思うと、腰を落とし椎名の鳩尾(みぞおち)に真っ直ぐ拳をねじ込む。
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